アセットアロケーション(資産配分)の考え方とおすすめのシミュレーション方法。
投資を始めた人
資産運用ではアセットアロケーションが大事って聞いたけど…
なんのことだかよく分からない…
資産割合?
どう考えればいいのか教えて欲しい!
こういった疑問に答えます。
アセットアロケーションとは資産配分のことです。
資産運用では銘柄の選定や商品の選定よりもアセットアロケーションが運用成績に影響します。
インデックス投資の名著『敗者のゲーム』でも資産運用方針の第一段階でアセットアロケーションを定めることを提唱しています。
投資をする、となると銘柄や商品の選定を一生懸命にやりますが、アセットアロケーションがしっかり固まった後の方が良いです。
この記事では、アセットアロケーションとはそもそも何なのか、ということについて説明します。
また、自分に合ったアセットアロケーションの探し方についても説明します。
もくじ
異なる資産クラスを組み合わせることの効用
『1つのカゴに卵を盛るな』という格言があります。
これは『資産を1つに集中しないようにしましょう』という意味です。
なぜ1つの資産に集中することが危険かというと、それが無くなってしまった時にすべての資産を失ってしまうからです。
1つの銘柄、市場に投資していて、その企業が倒産したり、市場が暴落したりしたら資金を失ってしまいます。
それを防ぐために複数の資産を持つべきであるということです。
この考え方がアセットアロケーションの基本です。
1つの資産にすべてを賭けることは大きく儲けることができる可能性がある一方で、全財産を失ってしまう可能性があります。
これは安定した生活をおくる上では必要のないことです。
具体的に考えていきましょう。
今、資産の全てを株式でもっているとしましょう。
このような資産配分で株式市場全体が半値まで暴落してしまったら、資産価値は半分になってしまいます。
1,000万円の資産があるとすると500万円になってしまいます。
資産が半分になってしまうのはリタイアが近ければ近いほど、耐えがたいです。
そこで、分散という発想が出てきます。
資産全部を株式で持つのではなく、他の資産に振り分けてあげましょう、という考え方です。
さて、先ほどの例では資産の全てが株式だったので、株式市場の暴落によって資産が半分になってしまいました。
この時、値動きの異なる債券と半分ずつ資産を配分していればある程度の損失を回避することができます。
こちらでは株式の価格が半分まで減少してしまいましたが、債券価格が変わらなければ全体としては25%の減少ですんでいます。
1,000万円を投資していたら750万円になるイメージです。
これぐらいなら精神的になんとか保てそうです。
1つの種類の資産が自分の資産のすべてだと、その資産への依存度が高くなります。
複数の資産で自分の資産を構成していると、1つが下落しても全体の減りは少なくてすむことが分かります。
僕も株式、債券、REITなどに資産を分散させています。
例えば株式:債券:REIT = 5:3:2ぐらいの割合で持っていれば、株式市場が半分になってしまったとしても全体としての損失は-25%に抑えることができます。
異なる銘柄を組み合わせることの効用
また株式という資産の中でも1つの企業の株式を購入するよりは複数の企業の株式を購入した方が大幅な下落は避けられます。
これは正確にいうとポートフォリオの説明になりますが、考え方は同じなので考えていきましょう。
1つの銘柄のみに投資をしていた場合、不祥事などで大きく下落した場合、または倒産してしまった場合は損失が大きくなります。
先ほどと同じように1銘柄に1,000万円投資していて、その株価が半分になってしまった場合を考えてみましょう。
1銘柄に投資をしている場合はその銘柄の下落がそのまま資産全体の損失になります。
このケースでは株価が半分になった場合を考えていますが、投資していた企業が倒産してしまえば、当然「ゼロ」になります。
考えただけでも恐ろしいですね。
大企業でも突然倒産することはありますし、東京電力のように自然災害起因で株価が暴落するケースもあります。
海外の企業ではジョンソンエンド・ジョンソンがベビーパウダーにアスベストが含有している疑いで起訴されたり、原油市場の暴落で石油関連銘柄が暴落したりしています。
そういった個別銘柄のリスクを避ける為にはやはり分散が有効です。
個別銘柄でこのリスクが取れない場合は投資信託やETFに投資することで銘柄の分散は可能です。
投資信託やETFは多くの銘柄に分散して投資されていて、少額から取引することができます。
今回は4つの銘柄に投資をしている場合、1銘柄の暴落が全体にどのような影響を与えるかを考えてみます。
複数銘柄に投資をしている場合は1つの株式の価値が大幅に下落してしまっても、資産全体から見た損失は少なくて済みます。
これが投資信託やETFなら100銘柄とか200銘柄に分散しているケースが多いので1銘柄に対する依存はさらに少なくなります。
一方で銘柄を分散し過ぎているとそのうちの1つが大きく成長したときにその成長に十分に乗れないこともあります。
そのことから銘柄を分散することなく投資をする人もいますが、長期間に渡って成長し続ける企業を確実に見分ける方法は存在しません。
かのウォーレンバフェットでも銘柄の先行きを正確に予想することはできないことから、自身の銘柄分析力に過剰な自信を持つことは禁物です。
僕は1銘柄に最大5%まで投資可能というルールを決めています。
これはどんなに期待している銘柄であっても過剰に投資することがないようにするためのルールです。
1銘柄5%以内であれば不祥事などで株価が半分になったとしても全体へのダメージは-2.5%と軽微なものになります。
異なる地域、通貨を組み合わせることの効用
投資先の国や通貨も分散させることが重要です。
なぜなら1つの国、1つの通貨に依存している状態は国や通貨と共倒れする危険があるからです。
日本人の場合は特に日本円への偏り(これをカントリーバイアスといいます)に気を付けましょう。
多くの人は、日本で会社に勤め、日本円でお給料をもらい、そのお金で食べ物や住む場所を確保することで生活ができ、引退したら年金を貰いながら生活するでしょう。
この状態はお金も住む場所も全てを日本に依存している状態です。
全てを日本に依存していると日本で何か起こった時に全資産がその影響を受けてしまいます。
円安が進行すれば輸入品は高くなりますし、日本が不況になれば給料やボーナスがカットされるかもしれません。
日本株のみで運用していたら、日本の不況と共に資産価値も下落してしまいます。
このような日本のみに依存するリスクを回避するためには、資産の一部を海外に向けることが有効な手立てとなります。
場所の分散を図るために他国の資産を保有することができれば、一国の経済が低迷しても資産の減少幅は小さくてすみます。
僕は現状、金融資産は半分以上を米ドルで所有しています。
さらに海外の銀行、証券会社にドル建ての資産を所有しています。
これは円建ての収入の人的資産、預金などの金融資産、年金など、ほとんど円に偏っているためです。
円もいつ外貨に対して暴落(超円安)するか分かりません。
その時のために国、通貨の分散は必要不可欠です。
アセットアロケーションの効果は、異なる値動きの資産の組み合わせによる分散効果によって発揮される
分散効果は『フリーランチ』と言われ、その効果は値動きの異なる資産を組み合わせた時に発揮されます。
ここまでは1つの資産が下落したときに他の資産は値動きしないケースを考えてきました。
しかし、株式と債券のように一方が下落すると一方が上昇する資産の組み合わせがあります。
この値動きの特徴を利用することで損失を抑えることができます。
例えば株式と債券に50%ずつ投資をしていて、株式が半分になってしまった場合でも下図のように債券価格が上昇することによって損失を限定的にすることができます。
この現象は過去の値動きから実証されており、株式と債券が相性のいいアセットクラスとして利用されるのはこのためです。
同様の分散効果は株式のセクター間でも発生します。
1つのセクターは下落したけど、他の銘柄が上昇し損失をカバーするという場合です。
コロナショックの際には、原油価格が大暴落したためRDSB(ロイヤルダッチシェル)やXOM(エクソンモービル)などのエネルギーセクター銘柄は暴落しました。
一方で、JNJ(ジョンソンエンドジョンソン)やABBV(アッヴィ)などのヘルスケアセクターはコロナショック以前よりも上昇しています。
このケースではAセクターが半分になっていますが、Bセクター、Cセクターの上昇のおかげで損失が減少しています。
さて、1銘柄のみに投資をした集中投資とアセットアロケーションで分散投資した資産の損失のイメージをまとめます。
集中投資では一つの銘柄の損失をそのまま被ることになり、アセットアロケーションを用いた分散投資では、他の銘柄との分散、他の資産との分散によって損失が緩和されているのが分かります。
様々な資産、銘柄、場所に投資をすることはリスクの低減に対して有効であり、資産形成に是非とも取り入れたい考え方です。
シミュレーションの神サイト『Portfolio Visualizer』を使おう。
アセットアロケーションが大事なのは分かった!
自分で調べる方法はあるの?
具体的なシミュレーション方法が知りたいです。
こういった問題を解決するためのツールとしてPortfolio Visualizerというサイトを紹介します。
このサイトは無料で、会員登録などなしでポートフォリオのバックテストができる神サイトです。
有料プランではバックテスト結果をExcelやPDFでの出力ができます。
Portfolio Visualizerは米国の個別銘柄やETFのバックテストができます。
アセットアロケーションのシミュレーションをしたい場合は、市場全体にインデックスしたETFを用いると分かりやすいです。
例えば以下のリンクはPortfolio VisualizerにてS&P500のETF(SYP)、米国長期債券ETF(TLT)、これらを半々で持った場合のバックテストの結果です。
【SPY : TLT = 50 :50】 BackTest result
2009年のリーマンショック、2020年のコロナショックにSPY(青)ではSPYはそれぞれ50%以上、35%以上下落しています。
一方で米国長期債のTLT(赤)は大きく上昇しています。
2つのETFを50%ずつ投資したポートフォリオ(黄)を見てみると、2009年、2020年で下落はしているものの、株式のみのSPY(青)に比べると損失が減少していることが分かります。
2020年は特に米国で実質ゼロ金利政策が採られたため、TLTが上昇しています。
このような感じで色々なETFを組み合わせることで、株式と債券、REIT、金、現金の割合を検証することができます。
僕がアセットアロケーションのシミュレーションで使うETFは以下です。
- 株式 … SPY(S&P500 Index)またはVTI
- 債券 … TLT(米国長期債ETF)またはBND(米国総合債券)
- REIT … IYR(米国REIT ETF)
- 金 … GLD(金ETF)
- 現金 … CASH
これらを組み合わせたポートフォリオの過去の値動きを眺めることで、自分が感覚的に受け入れられるアセットアロケーションを見つけることができます。
収入源も資産も適度な分散が必要
過度なリスクを避けるために、1つの金融資産に集中投資せずにアセットアロケーションで適切に分散することが資産運用では必要です。
これは働き方や収入源も同様で、サラリーマンとしての自分にお金や時間などの資源を全力投入することは、得策とは言えません。
なぜならば、1つの資産、収入源に依存している状態ではそのたった1つがダメになってしまった時にカバーのしようがないからです。
確かに一つに集中すると大きく成功することができるかもしれません。
1銘柄に集中投資すれば、例えばかつてのアマゾンに集中投資していれば、資産を大きく成長させることができたでしょう。
しかし、大きく成長する銘柄を事前に見極めることは簡単ではなく、外れた時はゼロになってしまうこともあります。
特に成長株においては『生き残りバイアス』がありますので注意が必要です。
そのことを考えるとやはり投資対象や収入源は適切な範囲で分散する必要があります。
ただし、著名な研究者であり『ウォール街のランダムウォーカー』の著者であるバートン・マルキールは、本書のなかで過度な分散(例えば100も200も個別銘柄に投資する)ことには意味がなく、50銘柄以降は分散効果が小さくなると報告しています。
個別銘柄に投資をする際は、自分の中で投資基準を定め、優良銘柄を拾っていく必要があります。
そういった優良銘柄に愚直に投資を続けることで給与収入に依存した状態を脱し、自由な人生を謳歌することができるようになります。
Life is Free!!
Written by Tametomo Itsuki.